9)ジュラ地方(Jura)

(1)概要

・スイスとの国境沿いのジュラ山脈の西側に位置する。

・ブルゴーニュ地方の東側に位置するためブドウ品種や地質が近い。

・酸化熟成タイプのワインが特徴。

・気候:半大陸性気候、春は雨量が多く、夏は乾燥している。

・土壌:泥炭岩主体

(2)歴史

・紀元80年頃、ブドウ栽培が始まったとされている。

・フランス革命頃からブドウ畑が増えてきたが、19世紀後半のフィロキセラによりブドウ畑が壊滅。

・その後、復活しA.O.C.認定される産地が増えてきた。

・ジュラ地方(Jura)北東部にあるアルボワ(Arbois)は、酵母による発酵のメカニズムを解明した生物学者(細菌学の父)ルイ・パスツール(Louis Pasteur)ゆかりの地として有名

(3)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・サヴァニャン(Savagnin)=ナチュレ(Naturé):ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)を造る際に使用するブドウ品種。十字軍の時代にオーストリアまたはハンガリーから渡来した。

・シャルドネ(Chardonnay)=ムロン・ダルボワ(Melon d’Arbois):10世紀頃から栽培されており面積最大(約50%)

B.黒ブドウ

・プールサール(Poulsard):ジュラ地方原産。泥炭岩を好み、栽培面積の25%弱を占める。

・トゥルソー(Trousseau):ジュラ地方原産。晩熟。

・ピノ・ノワール(Pinot Noir)=グロ・ノワリアン(Gros Noirien)

図 22

(4)ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)

・黄色ワイン

・サヴァニャン(Savagnin)を100%使用

・色調:ジョーヌ(Jaune)=黄色

・オーク小樽で6年目の12月15日まで熟成させる。そのうち60ヵ月以上は産膜酵母の下で熟成

・産膜酵母:醸造過程で酒類や醸造食品の表面に薄膜を形成、その事により酸化防止と独特の風味を付与する酵母のこと

・熟成期間中の補酒(ウイヤージュ Ouillage)と、澱引き(スーティラージュ Soutirage)は禁止

・クラブラン(Clavelin)という620mlのボトルで7年目の1月1日以降販売

図 23

クラブンボトル

画像引用:エノテカ

https://www.enoteca.co.jp/item/detail/FA45Z0010

(5)ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)

・藁(パイユ)ワイン

・藁の上で陰干しをしたブドウから造る甘口ワイン

・干しぶどうを造る作業をパスリヤージュ(Passerillage)という

・現在は、藁やスノコの上または吊り下げて最低6週間乾燥させる。

・品種:シャルドネ(Chardonnay)、サヴァニャン(Savagnin)、プールサール(Poulsard)、トゥールソー(Trousseau)

・収穫から3年目の11月15日まで熟成期間。そのうち18ヵ月は木樽熟成

・圧搾時の糖度は320g/L〜420g/Lでなければならない。

・ポ(Pots)またはドゥミ・クラウン(Demi Clavlin)と呼ばれている375mlのボトルで出荷する

Vin de Paille

図 24  Vin de Paille

(6)A.O.C.

表 43

A.O.C.ワイン備考
アルボワ
(Arbois)
赤、白、ロゼ、ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)、ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)・生産量の70%が赤
・赤:プールサール(Poulsard)、トゥールソー(Trousseau)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)、白ブドウ(補助)
・白:シャルドネ(Chardonnay)、サヴァニャン(Savagnin)、黒ブドウ(補助)
アルボワ・ピョピヤン
(Arbois Pupillin)
赤、白、ロゼ、ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)、ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)・ピョピヤン村(Pupillin)で造られた場合のみ名乗ることができる。
コート・デュ・ジュラ
(Côtes du Jura)
赤、白、ロゼ、ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)、ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)・白の生産が主流
レトワール
(L’Etoile)
白、ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)、ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)・白:サヴァニャン(Savagnin)、シャルドネ(Chardonnay)主体、補助品種としてプールサール(Poulsard)
シャトー・シャロン
(Château-Chalon)
ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)・収穫時のブドウ糖度がヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)より厳しい
・糖度204g/L
・土壌:灰色泥炭岩
・ヴァン・ジョーヌ:サヴァニャン(Savannah)
クレマン・デュ・ジュラ
(Crémant du Jura)
発泡(白)、発泡(ロゼ)・瓶内二次発酵
・最低9ヵ月の瓶内熟成
・サヴァニャン(Savagnin)、シャルドネ(Chardonnay)、プールサール(Poulsard)、トゥールソー(Trousseau)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)
マクヴァン・デュ・ジュラ
(Macvin du Jura)
赤(甘)、白(甘)、ロゼ(甘)・コート・デュ・ジュラ・エリアで造られたV.D.L.(ヴァン・ド・リキュール)
・V.D.L.=Vins de Liqueurs:アルコール未発酵のブドウ果汁にブランデーなどのアルコールを添加することで、糖度を保ったまま樽またはタンクで熟成させて造られる甘口ワインのこと。
・オーク樽で10ヵ月以上の熟成
マール・デュ・ジュラ
(Marc du Jura)
搾りかすから造られたブランデー・2015年A.O.C.認定

10)サヴォワ地方(Savoie)

(1)概要

・アルプス山脈の麓に位置する。

・フランス東部でイタリア、スイスと国境を接している。

・気候:主に海洋性気候、斜面の向きや標高により大陸性、地中海性気候

・土壌:多様な土壌

(2)歴史

・紀元前1世紀ころ、ブドウ畑が広がる。

・中世、修道士達によりブドウ畑が拡大。

・フィロキセラで衰退するが現在もワイン造りが行われている。

図 25

(3)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・ジャケール(Jacquère):サヴォワで約50%を占める。アルテス(Altesse)=ルーセット(Roussette)、

シャスラ(Chasselas)、グランジェ(Gringet)、ルーサンヌ(Roussanne)

B.黒ブドウ

・モンドゥーズ(Mondeuse):サヴォワ地方を代表する品種。ガメイ(Gamay)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)

(4)A.O.C.

表 44

A.O.C.ワイン備考
ヴァン・ド・サヴォワ
(Vin de Savoie)
赤、白、ロゼ、発泡(ロゼ)・赤、ロゼ:ガメイ(Gamay)、モンドゥーズ(Mondeuse)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)が主要
・赤例外:ザヴォワ県カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、ペルサン(Poulsard)が認められている。
イゼール県エトレール・ド・デュイ、セルヴァナン、ジュベルタンが認められている。
・白:アリゴテ(Aligoté)、アルテス(Altesse)、シャルドネ(Chardonnay)、ジャケール(Jacquère)、モンドゥーズ・ブランシュ(Mondeuse Blanche)、ヴェルトリーナー・ルージュ(Veltliner Rouge)、プレスコ(Pleskot)が主流
・白例外:オート・ザヴォワ県シャスラ(Chasselas)、グランジュ(Gringet)、ルーセット(Roussette)が認められている。
・規定を満たした場合地理的名称を付けることができる
ヴァン・ド・サヴォワ+地域名
(Vin de Savoie)
赤、白、ロゼ、発泡(ロゼ)・対象となる地域:クレピー(Crépy)、マリニャン(Marignan)、リパイユ(Ripaille)、マラン(Marin)の上記はシャスラ(Chasselas)を主体とした白のみ
シニャン・ベルジュロン(Chignin-Bergeron)はルーサンヌ(Roussanne)100%の白のみ
エーズ(Ayze)、ショターニュ(Chautagne)、ジョンジュー(Jongieux)、アプルマン(Aprement)、クリュエ(Cruet)、モンメリアン(Montmélian)、サン・ジョワール・プリウレ(Saint Jeoire Prieuré)、アビーム(Abymes)、シニャン(Chignin)、アルバン(Arbin)
クレマン・ド・サヴォワ
(Crémant de Savoie)
発泡(白) ・エーズ(Ayze)を名乗ることのできる村以外が名乗ることができる。
・瓶内二次発酵
・瓶内熟成9ヵ月以上
ルーセット・ド・サヴォワ
(Roussette de Savoie)
・白:ルーセット(Roussette)100%
・規定を満たした場合地理的名称を付けることができる
ルーセット・ド・サヴォワ+地域名
(Roussette de Savoie)
・対象となる地域:フランジー(Frangy)、マルテル(Marestel)、モントゥー(Monthoux)、モンテルミノ(Monterminod)
セイセル
(Seyssel)
・アルテス(Altesse)100%
セイセル・モレット
(Seyssel Molette)
・モレット(Molette)100%の場合に名乗ることができる。
セイセル・ムスー
(Seyssel Mousseux)
発泡(白)・発泡(白):アルテス(Altesse)、シャスラ(Chasselas)、モレット(Molette)の3品種が認められている。
・瓶内二次発酵
ビュジェイ
(Bugey)
赤、白、ロゼ、発泡(白、ロゼ)・瓶内二次発酵
・瓶内熟成9ヵ月以上
・白:シャルドネ(Chardonnay)主体
ビュジェイ・マニクル
(Bugey Manicle)
赤、白・赤:ピノ・ノワール(Pinot Noir)100%
・白:シャルドネ(Chardonnay)100%
ビュジェイ・モンタニュー
(Bugey Montagnieu)
赤、発泡(白)・赤:モンドゥーズ(Mondeuse)100%
・瓶内二次発酵
・瓶内熟成9ヵ月以上
ビュジェイ・セルドン
(Bugey Montagnieu)
発泡(ロゼ)・発泡(ロゼ):ガメイ(Gamay)、プールサール(Poulsard)
ルーセット・ド・ビュジェイ
(Roussette de Savoie)
・白:ルーセット(Roussette)100%
・規定を満たした場合地理的名称を付けることができる