1)トスカーナ州

(1)概要

・西は地中海に面しており、海岸線は397kmに及ぶ。

・州都はフィレンツェ。

・州としてのワインの生産量は中規模であるが、高品質なワインが多い。

・キアンティ、キアンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノなどがある。

・1970年代規則にとらわれない自由な発想で生み出されたワインは「スーパータスカン」として国際的知名度をあげた。

・赤ワインが87%

・気候:内陸部は夏が暑く、冬は寒い大陸的気候、海岸部は温暖で雨も少ない地中海性気候。

トスカーナ州

図 37

(2)歴史

・14世紀から15世紀、フィレンツェでは銀行業で栄えたメディチ家をリーダーとしてルネッサンスの中心地となった。

・1716年、トスカーナ大公コジモ3正がカルミニャーノ、キアンティ、ポミーノ、ヴァル・ダルノ・ディ・ソプラのワイン産地の境界を定めた。これが世界最初の原産地保護の例となった。

・1870年頃、ベッティーノ・リカーゾリ男爵は、キアンティのベースとなる品種構成(フォルムラ Formulae)を定めた。

(3)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・ヴェルナッチャ(Vernaccia)、マルヴァジア・ビアンカ(Malvasia Bianca)、トレッビアーノ(Trebbiano)

B.黒ブドウ

・サンジョヴェーゼ(Sangiovese)、カナイオーロ・ネーロ(Canaiolo Nero)

(4)D.O.C.G.

表 67

D.O.C.G.ワイン備考
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
(Brunello di Montalcino)
・シエナ県モンタルチーノで造られる偉大な赤ワイン。
・ブドウ収穫年より5年目の12月末より前は消費できない。
・赤:サンジョヴェーゼ(Sangiovese)=ブルネッロ(Brunello)100%
カルミニャーノ
(Carmignano)
・1716年トスカーナ大公コジモ3世によりイタリアで最初の原産地呼称に指定された。
・赤:サンジョヴェーゼ(Sangiovese)50%以上、カナイオーロ・ネーロ(Canaiolo Nero)20%以上まで、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)は10%から20%までとの規定がある。
キアンティ
(Chianti)
・トスカーナ州6県の多数のコムーネ(市町村)で造られる。
・リゼルヴァ(Riserva)はアルコール度数12%以上、熟成期間2年(うち木樽熟成6ヵ月)
・サンジョヴェーゼ(Sangiovese)70〜100%、その他30%まで(白ブドウ10%まで)
・7つの特定指定地域がある。コッリ・アレティーニ(Colli Aretini)、コッリ・フィオレンティーニ(Colli Fiorentini)、コッリ・セネージ(Colli Senesi)、コッリーネ・ピサーネColline Pisane)、モンタルバーノ(Montalbano)、ルフィーナ(Rufina)、モンテスペルトーリ(Montespertoli)
キアンティ・クラッシコ
(Chianti Classico)
・フィレンツェとシエナの間に位置する8コムーネ(市町村)で造られる。
・リゼルヴァ(Riserva)はアルコール度数12.5%以上、熟成期間24ヵ月の熟成(うち3ヵ月の瓶内熟成)
・グラン・セレツィオーネ(Gran Selezione)はアルコール度数13%以上以上、熟成期間30ヵ月(うち3ヵ月の瓶内熟成)
エルバ・アレアティコ・パッシート(Elba Aleatico Passito)
アレアティコ・パッシート・デッレルバ(Aleatico Passito dell’Elba)
赤(甘口、パッシート)・陰干しして糖度を上げたブドウから造られる甘口赤ワイン
・赤:アレアティコ(Aleatico)100%
モンテクッコ・サンジョヴェーゼ
(Montecucco Sangiovese)
・赤:サンジョヴェーゼ(Sangiovese)主体
モレッリーノ・ディ・スカンサーノ
(Morellino di Scansano)
・赤:サンジョヴェーゼ(Sangiovese)主体
ヴァル・ディ・コルニア・ロッソ(Val di Cornia Rosso)
ロッソ・デッラ・ヴァル・ディ・コルニア(Rosso della Val di Cornia)
赤(甘口、パッシート)・赤:サンジョヴェーゼ(Sangiovese)主体、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロ(Merlot)
スヴェレート
(Suvereto)
・赤:カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、メルロ(Merlot)
ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ
(Vino Nobile di Montepulciano)
・「優雅で高貴な(Nobile)ワイン」とされてる。
・ラベルに「トスカーナ」と表記することが義務づけられた。
・赤:サンジョヴェーゼ()=プルニョーロ・ジェンティーレ(Prugnolo Gentile)70%以上
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ
(Vernaccia di San Gimignano)
・トスカーナ州で唯一白ワインが認められているD.O.C.G.
・ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ(Vernaccia di San Gimignano)85%以上

2)ウンブリア州(Umbria)

(1)概要

・海には接していないイタリア中央部にある州。

・イタリアの「緑の心臓」と呼ばれている。

・気候:地域により亜地中海性気候、亜大陸性気候があり、夏は乾燥して暑いが、川や湖の影響で適度の風が吹く。冬は寒くなる。

・白ワインが46%

ウンブリア州

図 38

(2)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・グレケット(Grechetto):ギリシャ起源の白ブドウ

・プロカニコ(Procanico)

B.黒ブドウ

・サグランティーノ(Sagrantino):ペルージャ県モンテファルコ村周辺だけで栽培されている。ポリフェノール含有量が異常に多い。長期熟成向きワイン向き。

(3)D.O.C.G.

表 68

D.O.C.G.ワイン備考
モンテファルコ・サグランティーノ
(Montefalco Sagrantino)
赤、パッシート甘口・赤:サングランティーノ(Sagrantino)100%
トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ
(Torgiano Rosso Riserva)
・赤:サングランティーノ(Sagrantino)主体

3)マルケ州(Marche)

(1)概要

・西はアペニン山脈、東はアドリア海に挟まれている。

・69%が丘陵地帯、31%が山岳地帯で平野部がほとんどない。

・気候:北部は亜大陸性気候と地中海性気候、南部は地中海性気候。

・生産量の55%が白ワイン

マルケ州

図 39

(2)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・ヴェルディッキオ(Verdicchio)、ペコリーノ(Pecorino)、パッセリーナ(Passerina)、ビアンケッロ(Bianchello)

B.黒ブドウ

・モンテプルチャーノ(Montepulciano)

・ヴェルナッチャ・ネーラ(Vernaccia Nera):マルケ州、特にマチュラータ県で栽培されている珍しい黒ブドウ。

・ラクリマ(Lacrima):マルケ州アンコーナ県で栽培されている珍しい黒ブドウ。

(3) D.O.C.G.

表 69

D.O.C.G.ワイン備考
コーネロ
(Conero)
・「アドリア海沿岸で最も優れた赤ワイン」と古代ローマ時代よりその名を知られている。
・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)主体
オッフィーダ
(Offida)
赤、白・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)
・白:ペコリーノ(Pecorino)
カステッリ・ディ・イエージ・ヴェルディッキオ・リゼルヴァ
(Castelli di Jesi Verdicchio Riserva)
・白:ヴェルディッキオ(Verdicchio)主体
ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・リゼルヴァ
(Verdicchio di Matelica Riserva)
・白:ヴェルディッキオ(Verdicchio)主体
ヴェルナッチャ・ディ・セッラペトローナ
(Vernaccia di Serrapetrona)
発泡(赤)・ヴェルナッチャ・ネーラ主体に最低40%のブドウをアッパシメントして造られる発泡性赤ワイン
・発泡(赤):ヴェルナッチャ・ネーラ(Vernaccia Nera)

(4)主なD.O.C.

D.O.C.ワイン備考
ヴェルディッキオ・ディ・カステッリ・ディ・イエージ
(Verdicchio dei Castelli di Jesi)
・1950年代にアンフォラ型のボトルで世界的大成功を収めた。
・1980年代初頭から通常ボトルが主体となった。
・白:ヴェルディッキオ(Verdicchio)85%

4)ラツィオ州(Lazio)

(1)概要

・州都はローマ(イタリアの首都)

・古代ローマ帝国時代はまさに「世界の中心」で、中世はローマ・カトリック総本山である「信仰の中心」だった。

・東側を南北に走るアペニン山脈と、西側に広がるティレニア海の間にある丘陵地帯(州土の54%)で主にブドウが栽培されている。

・白ワインが71%

・気候:温暖で、甘が少ない、典型的な地中海性気候だが、アペニン山脈近くではより大陸性の涼しい気候。

ラツィオ州

図 40

(2)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・マルヴァジア・ビアンカ・ディ・カンディア(Malvasia Bianca di Candia)

・マルヴァジア・デル・ラツィオ(Malvasia del Lazio):マルヴァジア・プンティナータとも呼ばれる。

・トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)

・トレッビアーノ・ロマニョーロ(Trebbiano Romagnolo)

・トレッビアーノ・ジャッロ(Trebbiano Giallo):ローマ周辺で栽培されている白ブドウ。ブドウが成熟すると黄色(ジャッロ)になるのでこの名前が付いた。

B.黒ブドウ

・チャサネーゼ(Cesanese):ラツィオ州原産の黒ブドウ。

・サンジョヴェーゼ(Sangiovese)

・モンテプルチャーノ(Montepulciano)

(3)D.O.C.G.

表 70

D.O.C.G.ワイン備考
カンネッリーノ・ディ・フラスカーティ
(Cannellino di Frascarti)
白甘口・この地域ではドルチェ(Dolce 甘口)と言わず、カンネッリーノ(Cannellino)と言う。
・遅摘みの糖度の上がったブドウから造られ、一部干しぶどうを加えることもある。
・白:マルヴァジア・ビアンカ・ディ・カンディア(Malvasia Bianca di Candia)、マルヴァジア・デル・ラツィオ(Malvasia del Lazio)主体
チェザネーゼ・デル・ピリオ
(Cesanese del Piglio)
・修道院発祥の地で修道士たちに守られて現在に至る歴史の古い銘柄。
・赤:チャサネーゼ(Cesanese)90%以上
フラスカーティ・スペリオーレ
(Frascati Superiore)
・詩人ゲーテも称賛していたワイン。
・白:マルヴァジア・ビアンカ・ディ・カンディア(Malvasia Bianca di Candia)、マルヴァジア・デル・ラツィオ(Malvasia del Lazio)主体

5)アブルッツオ州(Abruzzo)

(1)概要

・東はアドリア海、西はアペニン山脈に挟まれて、その間の丘陵地帯。

・平野は1%しかない。

・山岳が多く人口密度が低いことから「人間よりも羊が多い」と揶揄される州。

・気候:地中海性気候。

・生産量の42%が白ワイン

アブルッツォ州

図 41

(2)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・トレッビアーノ・アブルッツェーゼ(Trebbiano Abruzzese):アブルッツオ州で広く栽培されているトレッビアーノ

・ペコリーノ(Pecorino)、パッセリーナ(Passerina)、トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)

B.黒ブドウ

・モンテプルチャーノ(Montepulciano)

(3)D.O.C.G.

表 71

D.O.C.G.ワイン備考
モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ
(Montepulciano d’Abruzzo Colline Teramane)
・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)主体
テッレ・トッレージ
(Terre Tollesi)
トゥッルム
(Tollum)
白、赤、スプマンテ・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)
・白:ペコリーノ(Pecorino)、パッセリーナ(Passerina)
・発泡:シャルドネ(Chardonnay)

6)モリーゼ州(Molise)

(1)概要

・東はアドリア海

・1963年アプルッツオ州から分離して作られた。

・人口もヴァッレ・ダオスタに次いで少なく、経済はあまり発展していない。

・山岳地帯が55%、丘陵地帯が45%で、平野はほとんど無い。

・東はアドリア海

・赤ワインが72%

・気候:亜大陸性気候で、夏は暑く、湿気が高い。冬は寒く、雪が降る。

(2)主要ブドウ品種

A.白ブドウ

・トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)、ペコリーノ(Pecorino)、パッセリーナ(Passerina)、ボンビーノ・ビアンコ(Bombino Bianco)

B.黒ブドウ

・ティンティリア(Tintilia):モリーゼ州だけで栽培されている黒ブドウ。

・モンテプルチャーノ(Montepulciano)、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)、アリアニコ(Aglianico)

モリーゼ州

図 42

(3)D.O.C.

表 72

D.O.C.ワイン備考
ティンティリア・デル・モリーゼ
(Tintilia del Molise)
赤、ロゼ・赤、ロゼ:ティンティリア(Tintilia)95%
ビフェルノ
(Biferno)
赤、ロゼ、白・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)、アリアニコ(Aglianico)
・白:トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)
モリーゼ
(Molise)
ディ・モリーゼ
(del Molise)
赤、ロゼ、白、発泡(白)・赤:モンテプルチャーノ(Montepulciano)、アリアニコ(Aglianico)他
・ロゼ:モンテプルチャーノ()
・白:モスカート・ビアンコ(Moscato Bianco)他
ペントロ・ディ・イセルニア
(Pentro di Isernia)
ペントロ
(Pentro)
赤、ロゼ、白・赤、ロゼ:モンテプルチャーノ(Montepulciano)、ティンティリア(Tintilia)
・白:ファランギーナ(Falanghina)、トレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)