7)アルザス地方(Alsace)

(1)概要

・フランス北東部、ドイツと国境を接するワイン産地

・フランスとドイツで領有権が争われたためドイツからの影響を色濃く受けている。

・白ワインの生産が大半を占め、生産されるブドウ品種などドイツと類似性がある。

・気候:大陸性気候、ヴォージュ山脈(Vosges)の影響で降水量は少ない。

・土壌:モザイクと表現されるほど多様な土壌

図 21

(2)歴史

・9世紀頃ブドウ栽培をしていた記載がある。

・1870年フランス帝国とプロイセン王国の普仏戦争により領有権がプロイセン王国(現ドイツ)になる。

・1918年第一次世界大戦後、フランス領に戻る

・1910年ナチス・ドイツがアルザスを占領

・1945年第二次世界大戦後フランス領に戻る

・1962アルザスA.O.C.が制定される

(3)主要ブドウ品種

A.白ブドウ(上質指定4品種)

・リースリング(Riesling)、ミュスカ(Muscat)、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)

B.白ブドウ(上質指定4品種以外)

・ピノ・ブラウン(Pinot Blanc)=クレヴネル(Klevner)、シルヴァネール(Sylvaner)、シャスラ(Chasselas)=グートエーデル(Gutedel)、オーセロワ(Auxerrois)

C.黒ブドウ

・ピノ・ノワール(Pinot Noir)

(4)A.O.C.

表 40

A.O.C.ワイン備考
アルザス
(Alsace)
赤、白、ロゼ・アルザスほぼ全域
・単一品種を使用した場合、ラベルに品種名を表記できる
・1962年認定
・上質4品種他、ピノ・ブラン(Pinot Blanc)、シルヴァネール(Sylvaner)、シャスラ(Chasselas)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)
ヴァン・ダルザス
(Vin d’Alsace)
赤、白、ロゼ
アルザス・グラン・クリュ
(Alsace Grand Cru)
・1975年にA.O.C.認定
・現在は51リーディ(小地区)が認められている。
・上質指定4品種のみ認められている
・例外的なグラン・クリュ※1
・収穫は手摘み
クレマン・アルザス
クレマン ダルザス(Crémant d’Alsace)
泡(白)、泡(ロゼ)・1976年A.O.C.認定
・泡(白):リースリング(Riesling)、ピノ・ブラン(Pinot Blanc)、ピノ・グリ(Pinot Gris)、オーセロワ(Auxerrois)、シャルドネ(Chardonnay)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)
・泡(ロゼ):ピノ・ノワール(Pinot Noir)100%
・瓶内二次発酵
・9ヶ月以上の瓶内熟成
・フランス内で一番のクレマンの生産量

※1例外的なグラン・クリュ

①アルテンベルグ・ド・ベルガイム(Altenberg de Bergheim)

・ゲヴェルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)、リースリング(Riesling)の単一もしくは複数の混醸が認められている。

②ケフェルコップフ

・リースリング(Riesling)、ゲヴェルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)の単一もしくは複数の混醸とアッサンブラージュが認められている。

③ゾッツェンベルグ(Zotzenberg)

・リースリング(Riesling)、ゲヴェルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)、シルヴァネール(Sylvaner)の単一が認められている。

④ヘングスト

・ピノ・ノワール(Pinot Noir)単一が認められている。

⑤キルシュベルグ・ド・バール

・ピノ・ノワール(Pinot Noir)単一が認められている。

(5)アルザスのワイン表記

A.アッサンブラージュ、混醸の表記

・エデルツヴィッケール(Edelzwicker):複数の白ブドウをアッサンブラージュまたは混醸したワイン

・ジャンティ(Genti):複数の白ブドウ(上質指定4品種)を50%以上を使ってアッサンブラージュしたワイン

B.甘口ワイン表記

・上質指定4品種のみ使用

・手摘み

・補糖は禁止

・規定を満たしたもののみヴァンダンジュ・タル・ディーヴ、(Vendanges Tardives)略VDT、セレクシオン・ド・グラン・ノーブル(Sélection de Grains Nobles)略SGNを表記することができる。

・ゲヴェルツトラミネール(Gewürztraminer)、ピノ・グリ(Pinot Gris)は糖度が上がりやすい品種であるため、糖分最低含有量が高く設定されている。

表 41 収穫時における果汁糖分最低含有量

 ゲヴェルツトラミネール
(Gewürztraminer)
ピノ・グリ
(Pinot Gris)
ミュスカ
(Muscat)
リースリング
(Riesling)
備考
ヴァンダンジュ・タル・ディーヴ
(Vendanges Tardives)
270g/l244 g/l・遅摘み
セレクシオン・ド・グラン・ノーブル
(Sélection de Grains Nobles)
306 g/l276 g/l・貴腐ワイン

C.VDT、SGN以外の糖度表示

・セック(Sec):残糖4 g/lまで

・ドゥミ・セック(Demi-Sec):残糖12 g/lまで

・モワルー(Moelleux):残糖45 g/lまで

・ドゥー(Doux):残糖45 g/l以上

8)ローレヌ地方(Lorraine)

(1)概要

・アルザス(Alsace)地方の西に位置している。

・2016年からグラン・テスト(Grand Est)地域圏を構成しいる。

・グラン・テスト(Grand Est)地域圏:フランス国内の地域再編成で統合されて新たに設立された地方行政区域のこと。ローレヌ地方のグラン・テスト圏には、アルザス地域のワイン街道やローレヌ地方の歴史的な都市などが含まれている。

・ワイン生産量は、アルザスの約1%(Alsace)とかなり少ない。

(2)A.O.C.

表 42

A.O.C.ワイン備考
コトー・ド・トゥール
(Côtes de Toul)
赤、白、ロゼ(グリ)・1998年A.O.C.認定
・赤:ピノ・ノワール(Pinot Noir)100%
・白:オーセロワ(Auxerrois)主体
・ロゼ:ガメイ(Gamay)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)、オーセロワ(Auxerrois)を直接圧搾してグリワインを造る
モーゼル
(Moselle)
赤、白、ロゼ・2011年A.O.C.に昇格
・赤:ピノ・ノワール(Pinot Noir)100%
・白:オーセロワ(Auxerrois)、ミュラートゥルガウ(Müller-Thurgau)、ピノ・グリ(Pinot Gris)
・ピノ・グリ、ミュラートゥルガウを単一使用した場合が品種名を表記できる。