1)酒類分類
・酒類は、日本の酒税法第2条「15℃においてアルコール分1度以上」と定義されている。
※酒税法第3条でアルコール分とは「15℃の時において原容量100分中に含有するエチルアルコール(=エタノール)の容量をいう」とされている。
※薄めて1度以上の飲料とすることができるもの、また溶解してアルコール分1度以上の飲料とできる粉末状のものを含む。
・酒類は、一般的に製造方法により以下の3つに分類されている。
※日本の酒税法では酒類を発泡性酒類、醸造酒、蒸留酒、混成酒と4つに大別している。
表 1
醸造酒 | 酵母菌の働きによってアルコール発酵させ、糖分がアルコールと二酸化炭素に変化し生成されるお酒例:果実原料:ワイン、シードル、日本酒 穀物原料:ビール、清酒、老酒 |
蒸留酒 | 水とアルコールの沸点の違いを利用し、醸造酒から水とアルコールを分離させることによって造られるお酒例:果実原料:ブランデー 果実以外:ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、ライム |
混成酒 | 醸造酒、蒸留酒をベースに薬草、スパイス、果実、糖分などで香味付けをしたお酒例:醸造酒原料:ヴェルモット 蒸留酒原料:リキュール類 カシス、キュラソー、アマレット |
2)醸造酒
・醸造酒とは、発酵により造られたアルコール飲料のこと。
・醸造の主な流れは、(水分+糖分)+ 酵母 = アルコール 二酸化炭素
・醸造方法には「単発酵」「単行複発酵」「並行複発酵」の3酒類がある。
(1)単発酵
代表的なものワイン
ブドウ(水分・糖分)+ 酵母 → 発酵 → ワイン
・糖分と水分が含まれるため酵母を加えることによりアルコール発酵が行われワインになる。
・糖化する必要がない。
(2)単行複発酵
代表的なものビール
大麦(デンプン)+ 麦芽(酵素) → 糖化 → 麦芽糖 + 酵母 → 発酵 → ビール
・大麦のデンプンを麦芽の酵素によって糖化を行う。
・デンプンを糖化した麦汁に酵母を加えることでアルコール発酵が行われビールになる。
・糖化とアルコール発酵は別の容器にて行う。
(3)並行複発酵
代表的なもの日本酒
・米のデンプンに麹の酵素を加え糖化を行う。
・糖化によってできたブドウ糖に酵母を加えることでアルコール発酵が行われ日本酒になる。
・糖化とアルコール発酵は同じ容器にて行われ同時進行にて管理される。
3)アルコール発酵
・フランスの化学者ジョセフ・ルイ・ゲイリュサック(Joseph Louis Gay-Lussac)によって化学式が示された。
ブドウ糖・果糖(C6H12O6) → エチルアルコール(2C2H5OH) + 二酸化炭素(2CO2)
4)ビール
(1)ビール
・主原料に麦芽、ホップ、水、副原料として麦や米、トウモロコシ、こうりゃん、ばれいしょなどを使って発酵させたもので、アルコール分が20度未満のもの。
・原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の100分の50以上のもの
・上記以外のものを発泡酒という
(2)原料
・二条大麦の麦芽
・ホップ
・水
(3)副原料
・麦
・米
・トウモロコシ
・デンプン
・2018年より麦芽重量の5%以内で、コリアンダー、香辛料、ハーブ、花、蜂蜜なども使用可能
(4)歴史
・紀元前4000年以上前のシュメール文明
・紀元前1700年代に制定された「ハムラビ法典」にビールに関する記述があった。
・1866年ルイパスツールによって「低温殺菌法」により長期保存と腐敗防止が可能になる。
・1873年リンデによるアンモニア式冷凍機の発明により低温によるビールの生産が実現。
・1883年ハンセンによる酵母の純粋培養法が発明され発酵のコントロールによる安定生産が可能になる。
・ルイパスツール、リンデ、ハンセンの発明はビールの三大発明とされている。
(5)生産量と消費量
・ビールの生産量はワインの7.7倍
・国別生産量1位は中国、日本は7位
・年間一人あたりの消費量1位はチェコ
・日本のビールにかかる税金はアメリカの9倍、フランスの4倍、ドイツの19倍であるため、ビールではなく発泡酒に割合が高くなっている。
(6)下面発酵ビール
A.ピルスナービール
・チェコのピルセンが発祥(ピルスナー ウルケル)
・日本のビールのほとんどがピルスナービール
・低温で長期発酵させるので、発酵終了時に酵母が沈殿する。
・爽快で淡色
・アルコール度数4〜5
B.ボック
・ドイツのアイベックが発祥
・濃い色だったが淡色が多くなった。
・豊かなコク
・アルコール度数6〜6.5
(7)上面発酵ビール
A.エール
・イギリスで発展
・アルコール度数2.5〜5.5
B.バイツェン
・ドイツバイエルン地方で発展
・小麦(バイツェン)麦芽を使用
・アルコール度数5〜5.5
C.トラピスト
・ベルギーの修道院で造られていたビール
・瓶内で後発酵を行う
・アルコール度数6〜10
D.スタウト
・イギリス発祥
・原料に砂糖が認められて造られた黒ビール
・ギネスが有名
・アルコール度数4〜8
(8)自然発酵
A.ランビック
・野生酵母による自然発酵
・ベルギーブリュッセル発祥
・大麦麦芽と小麦を使用
・瓶内後発酵が行われる
・アルコール度数5〜6
(9)その他
A.ラガービール
・貯蔵工程で熟成させたビール
・熱処理の有無は問わない
B.生ビール
・熱処理をしていないビール
・「非熱処理」を併記
5)ウイスキー
(1)ウイスキー
・穀物を原料とし、糖化 → 発酵 → 蒸留 →木樽での熟成を経た蒸留酒
(2)ウイスキー分類
A.モルトウイスキー
・大麦麦芽を使用し、単式蒸留機で2回蒸留したもの
B.シングルモルトウイスキー
・ひとつの蒸留所で造られたモルトウイスキーのみでブレンドされたウイスキー
C.ピュアモルトウイスキー
・ふたつ以上の蒸留所で造られたモルトウイスキーでブレンドされたウイスキー
D.グレーンウイスキー
・とうもろこしや小麦を使用し連続式蒸留機で蒸留したもの
E.ブレンデッドウイスキー
・モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたウイスキー
(3)世界5大ウイスキー
・アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズ
(4)その他
A.ホップの特徴と効果
・ビールの泡を持続させる
・雑菌の生育を抑える
・ビール特有の香りと苦味を与える
6)ブランデー
(1)ブランデー
・果実もしくは果実と水を原料とした蒸留酒
・イメージとしてワインを蒸留したものがブランデー
・ブドウ以外を原料としたブランデーもある
(2)コニャック
・フランスコニャック地方で造られるグレープブランデーのこと
・アルコール度数40以上での販売が義務づけられている。
・単式蒸留機で2回蒸留し、アルコール度数は72℃以内、収穫翌年の3月31日までに情リュが義務づけられている。
・使われるブドウ品種は、ユニブラン(サンテミリオン)、フォル・ブランシュ、コロンバールなど
・格付けは、グランド・シャンパーニュ(最高品質) → プティット・シャンパーニュ → ボルドリー → ファン・ボワ(栽培面積最大) → ボン・ボワ → ボワ・オルディネール(栽培面積最小)
・熟成表示はアッサンブラージュされる原種のウチ、もっとも若い原酒に合わせた表示をしなければならない
・コント2:VS、コント4:VSOP、コント6:ナポレオン、コント10:X.O.(Extra Old)、コント14:XXO(Extra Extra Old)
・A.O.C.:コニャック、グランド・フィーヌ・シャンパーニュ、Petite Fine Champagne、Fine Champagne
・98%がフランス国外に輸出
・消費地域:1位 アメリカ、2位 アジア中国圏、3位 欧州
(3)アルマニャック
・原料はグレープ・ブランデー
・フランス、アルマニャック地方ジェール県、ランド県、ロット・エ・ガロンヌ県で造られる
・品種:バコブラン、コロンバール、フォルブランシュ、ユニブランなど
・品質:バ・ザルマニャック → アルマニャック・テナレーズ → オー・タルマニャック
・熟成表示はアッサンブラージュされている原酒でもっとも若いものに合わせて表示する
・熟成表示:コント1:V.S.、コント4:V.S.O.P.、コント10:X.O.
(4)その他のグレープ・ブランデー
・スペイン:ブランデー・デ・ヘレス、イタリア:ブランデー・イタリアーノ、ドイツ:ヴァインブラント、ペルー及びチリ:ピスコ
(5)マール
・フランスでマール(Marc)とは、「ブドウの搾りかす」のこと
・イタリアではグラッパと呼ばれている
・ワインで残った搾りかすを発酵 → 蒸留したものをマールという
(6)カルヴァドス
・リンゴを発酵させてできるアップルワイン(シードル)を蒸留したもの
・産地:フランス、ノルマンディー地方カルヴァドス県中心とその周辺
・単式蒸留機で2回蒸留もしくは連続式蒸留
・蒸留は10月1日から収穫翌年の9月30日まで
・販売時のアルコール度数は40度以上
・A.O.C.:カルヴァドス(2年以上熟成)、カルヴァドス・ペイ・ドージュ(2年以上熟成)、カルヴァドス・ドンフロンテ(3年以上熟成)
・熟成表示:2年:V.S. 4年:V.S.O.P. 6年:ナポレオン
(7)その他のブランデー(オー・ド・ヴィー・フリュイ)
・ブドウ、リンゴ以外のフルーツを原料としたブランデーを「オー・ド・ヴィー・フリュイ」という
・スモモ:プリュヌ、黄色のプラム:ミラベル、紫色のプラム:クェッチ、木苺:フランポワーズ、アンズ:アプリコ、洋梨:ポワール、サクランボ:スリーズ、コケモモ:ミルティーユ
7)スピリッツ
(1)スピリッツ(Spirits)
・醸造酒を蒸留して造られた蒸留酒全般をスピリッツという。
・代表的なものとして、ジン、ウォッカ、テキーラ、ラム、アクアヴィット
(2)ジン(Gin)
・原料:穀物
・製法:穀物を麦芽や酵素剤を利用して糖化→発酵→蒸留、この蒸留酒にボタニカル(ジュニパーベリーや草根木皮)などを加えて再度蒸留する。
・おもなジン
オランダ:ジュネバ
イギリス(ロンドン):ドライジン
ドイツ:シュラインヘーガー
・カクテル:マティーニ、ギムレット、ジントニック、ホワイトレディーなど
(2)ウォッカ(Vodka)
・原料:トウモロコシ、小麦、大麦などの穀類やイモ類
・製法:原料を糖化→発酵→連続式蒸留→白樺炭でろ過する。
・おもなウォッカ
ズブロッカ:ズブロッカ草の香りを付けたフレーバード・ウォッカ
・カクテル:モスコミュール、スクリュードライバー、バラライカなど
(3)テキーラ(Tequila)
・メキシコ、ハリスコ州中心で栽培されている。
・テキーラ規制委員会(C.R.T.)により原産地呼称が認められている。
・原料:竜舌蘭(ブルーアガベ)を51%以上使用しなければならない。
・ブルーアガベ以外の竜舌蘭から造られたものをメスカルという
・製法:竜舌蘭の茎部分を蒸煮(むしに)→圧搾→搾り汁を発酵→単式蒸留機で2回蒸留
・おもなテキーラ
ブランコ:無色透明でホワイトシルバーと呼ばれている。
アネホ:1年以上熟成させたもの
レポサド:2ヶ月以上1年未満熟成させたもの
・カクテル:マルガリータ、テキーラサンライズ
(4)ラム(Rum)
・カクテル:ダイキリ、XYZ
・おもなラム:樽熟成による色調の違いからホワイトラム、ゴールドラム、ダークラムと分類される
A.トラディショナル
・生産国:ジャマイカ、西インド諸島
・原料:サトウキビ(砂糖を造る過程で造られる糖蜜)
・製法:糖蜜→発酵→蒸留
B. アグリコール
・生産国:マルティニック島(フランス)
・原料:サトウキビ
・製法:サトウキビの搾り汁→発酵→蒸留
・その他
刈り取り期間は1月1日から8月31日まで
蒸留は連続式蒸留
(5)アクアヴィット(Aquavit)
・原料:穀物
・製法:糖化→発酵→蒸留→ボタニカル(キャラウェイやフェンネル)を浸す→蒸留
8)リキュール(Liqueur)
(1)リキュール
・蒸留酒に香味や甘味を加えたもの
・日本の酒税法ではエキス分が2度以上のもの
・EU
アルコール15度以上
糖分含有量1Lあたり100g以上
糖分含有量1Lあたり250g以上を「クレーム・ド」という呼称を用いることができる
カシスの場合1Lあたり400g以上の糖分が必要
・原料:スピリッツ、ブランデー、ウイスキーなどの蒸留酒
芳香性原料
糖類、酸味となる原料
着色料
(2)香草、薬草系
・アブサン:原料ニガヨモギ
・シャルトリューズ:原料130種の薬草 産地フランスヴォロンの修道院
・カンパリ:オレンジの果皮 産地 イタリアミラノ
・グリーンティー:原料 緑茶 産地 日本 緑茶のリキュール
(3)果実系
・ホワイトキュラソー:原料 オレンジの果皮 代表銘柄 コアントロー
・オレンジキュラソー:原料 オレンジの果皮 代表銘柄 グラン・マルニエ(コニャックベース)
・梅酒
(4)種子系
・アマレット:原料 杏の核 産地 イタリア
・フランジェリコ:ヘーゼルナッツ風味のリキュール 産地 イタリア
(5)特殊
・ベイリーズ:原料 牛乳クリーム
・アドヴォカート:原料 卵黄
9)カクテル
・あるお酒に別のお酒など、何かを加えて新しい味を創作した飲み物
(1)ビルド(Build)
・グラスに直接材料を入れて提供するカクテル
・代表的なカクテル
ハイボール:ウイスキー+炭酸水
ジントニック:ジン+トニックウォーター
(2)ステア(Stir)
・ミキシンググラスの中に氷と材料を入れてバー・スプーンで混ぜて提供するカクテル
・代表的なカクテル
マティーニ:ジン+ドライベルモット+オリーブ+レモンピール
マンハッタン:ウイスキー(バーボン)+スイートベルモット+アロマティックビターズ
(3)シェーク(Shake)
・シェイカーに氷と材料を入れてシェークして提供するカクテル
・代表的なカクテル
ギムレット:ジン+ライムジュース+砂糖
サイドカー:ブランデー+ホワイトキュラソー+レモンジュース
ホワイトレディー:ジン+ホワイトキュラソー+レモンジュース
(4)ブレンド(Blend)
・ミキサーなど電動式の機械に氷と材料を入れて混ぜ合わせ、シャーベット状にして提供するカクテル
・代表的なカクテル
フローズンダイキリ:ラム+ライムジュース+砂糖